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リスキリングを企業はどう活用するのか?厚生労働省の検討状況を解説

リスキリングという言葉がネットやニュースでよく見かけるようになりましたが、リスキリングを支える人材開発支援助成金に関する法令が令和4年度10月に改正されました。

この改正によって、企業が自社内で高度IT人材を教育する際の助成金が増え、より生産性の高い人材を育成しやすくなってきました。

本記事では、リスキリングに関する厚生労働省の改正内容を確認していきます。

リスキリングとは?リカレントとの違いは何?

リスキリングという言葉が出てくる前に、「リカレント教育」という言葉良くネットやニュースで話題になっていました。

両者は一体何が違うのでしょうか。

私も最初聞いた時には「同じような言葉がまた出てきたな」と思いました。

ただし、よくよく調べてみると両者は明確に違います。

リカレント教育

リカレント教育は、「学び直すこと」を表しており教育機関などで新しい知識を得ることを指しています。

例えば、今経理業務を行なっている人がITを学び直したいために、情報工学に関する大学や学部に再度入学を行うことです。

MBAなどの修士を取得することもリカレントに該当するでしょう。

今の仕事の延長線上で行うのではなく、会社とは全く別の環境で個人で学び直しを行うイメージです。

個人で学び直しを行うために、厚生労働省では教育訓練給付金制度で一定の給付資格を満たした人に金銭的な援助をしてくれます。

リスキリング

一方で、リスキリングは今の会社の中で生産性を上げたりテクノロジーの進化などで必要になってくるスキルを習得することを指しています。

あくまで企業主導でスキルを身につけることを主眼としており、厚生労働省の制度を利用すると、企業に助成金が支払われる形になっています。

例えば、企業の中で定額制のサブスクサービスを利用すると助成金が最大2,500万円出たりと、人材育成への投資に対する助成が行われます。

人材開発支援助成金(人への投資促進コース)の変更内容

人材開発支援助成金(人への投資促進コース)の変更内容
厚生労働省より引用

人材開発支援助成金(人への投資促進コース)の変更内容は4つあります。

  • 助成限度額の引き上げ
  • 定額制訓練の助成率の引き上げ及び対象訓練の緩和
  • 自発的職業能力開発訓練の助成率及び助成限度額の引き上げ
  • 高度デジタル人材訓練の支給対象訓練の追加

①助成限度額の引き上げ

人への投資促進コースの1事業所が1年度に受給できる助成限度額を、1,500万円から2,500万円に引き上げ(成長分野等人材訓練を除く)られました。
助成限度額の引き上げ

人への投資促進コースの1事業所が1年度に受給できる助成限度額を、1,500万円から2,500万円に引き上げ(成長分野等人材訓練を除く)られました。

②定額制訓練の助成率の引き上げ及び対象訓練の緩和

定額制訓練の助成率の引き上げ及び対象訓練の緩和

経費助成率の引き上げが行われ、企業もかなり人材投資がしやすくなりました。

  • 中小企業:45%→60%へ
  • 大企業:30%→45%へ

また、対象の訓練が緩和されました。

訓練の実施目的が、職務に間接的・共通的に必要となるスキルでも、デジタル・DX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるために実施する教育訓練である場合は経費助成の対象になりました。

③自発的職業能力開発訓練の助成率及び助成限度額の引き上げ

自発的職業能力開発訓練の助成率及び助成限度額の引き上げ

変更点の1点目として、自発的職業能力開発訓練の助成率及び助成限度額の経費助成率を30%から45%に引き上げられました。

また、自発的職業能力開発訓練の1事業所が1年度に受給できる助成限度額を、200万円から300万円に引き上げられました。

④高度デジタル人材訓練の支給対象訓練の追加

高度デジタル人材訓練の支給対象訓練の追加

支給対象訓練に、国のデジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX(デラックス)」における講座レベルがITSSレベル4相当または3相当に区分される講座を支給対象訓練に追加されました。

対象が追加されたことにより、より訓練に取り組みやすくなりました。

注意事項

訓練開始日が令和4年12月2日以降である場合は、12月2日よりも前に訓練実施計画届を提出している場合でも、引き上げ後の助成限度額や経費助成率が適用されます。

人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」が創設

人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」は、企業の持続的発展のため、新製品の製造や新サービスの提供等により新たな分野に展開する、または、デジタル・グリーンといった成長分野の技術を取り入れ業務の効率化等を図るために創設されました。

  1. 既存事業にとらわれず、新規事業の立ち上げ等の事業展開に伴う人材育成
  2. 業務の効率化や脱炭素化などに取り組むため、デジタル・グリーン化に対応した人材の育成

事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業の立ち上げなどを行う事業主が労働者に対して、「新たな分野で必要な知識・技能を習得させるための訓練」を実施した際の費用を助成してくれます。

費用を助成することで人材育成行い、生産性を向上させて事業をのばすことが狙いです。

元々、職務に関連した訓練を実施すると訓練経費や賃金の一部を補助していましたが、事業展開等リスキリングリスキリング支援コースでは、従来よりも高率な助成を受けられます。

具体的な助成内容は以下の通りです。なお、いずれも業務内での訓練を意味する「On-JT」ではなく業務から外れた形で訓練を行う「OFF-JTを実施した」という場合を想定しています。

事業展開等リスキリング支援コースの支援対象訓練

  • 助成対象とならない時間を除いた訓練時間数が10時間以上であること
  • OFF-JT(企業の事業活動と区別して行われる訓練)であること
  • 職務に関連した訓練であって以下のいずれかに該当する訓練であること

(1)企業において事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
(2)事業展開は行わないが、事業主において企業内のデジタル・デジタルトランスフォーメーション化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるにあたり、これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練

事業展開等リスキリング支援コースの助成率と助成額

事業展開等リスキリング支援コースの助成率と助成額

リスキリング支援が増える中で、企業はどうやって利用して行くのか

リスキリングに関する助成がこれだけ行われると、企業側も生産性向上や自社のエンゲージメント向上に向けて積極的に取り組んでいくものと考えられます。

一方で、DXに関して消極的な経営者だったりDXを行い辛い業態・業種(肉体労働系など)では、あまり変化が起こらない可能性もあります。

従業員として自社がDXに関する投資余地があるにもかかわらず、リスキリングに関する社内施策が全く行われない企業は注意が必要です。

それは「従業員育成にそもそも投資したくない」か「助成されても投資する余裕がない」かのどちらかが理由だからです。

前者の従業員育成にそもそも投資したくない場合だと、従業員は使い捨てで辞めたら中途採用で補充すればいいと考えている可能性があります。

そんな使い捨てが前提の企業にはなるべく所属しておきたくないですよね。

また、助成されても投資する余裕がない場合は、経営がそもそも傾いているため、突然職を失ったり給与が上がりづらくなるリスクが考えられます。

いずれにせよ、リスキリングを活用していない企業に所属している方は注意が必要と考えています。

冒頭で解説した通り、リスキリングはあくまで会社の業務範囲内でのスキル強化になるため、全く別の業務(ITエンジニアなど)に転職したい場合などは教育訓練給付金を利用して、個人が大学やスクールなどに通って資格やスキルを身につける方法が考えられます。

ただし、教育訓練給付金の支給には条件があります。

教育訓練給付金に関する解説記事を良く読んで、自信が対象かどうかを確認してください。

  • この記事を書いた人

べるぜ

●大手企業管理職 ●採用やマネジメントを担当 ●全社表彰や最優秀組織長賞等といった表彰をいくつも受賞 ●30代半ばにして年収1,300万円達成 ●大手メディアにマネジメントに関する寄稿経験あり

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